2010.02.18

アウラ誕生秘話

私は2000年4月にアウラ学びの森を開校しました。今年でちょうど10年目にあたります。私が、アウラを作った最大の理由は、学習者である子どもたちが、学年が上がるにつれて〈勉強嫌い〉になっていく、あるいは学習を〈やらされる〉ものと捉えるようになっていく現実を何とかしたいと考えたからです。そしてこのことは、私自身が持っている学習観と今の教育が実際に提供している学習観との差異に裏付けられています。

私にとっての〈学習〉とは、大変エキサイティングなものに他なりません。それは、私にとっての未知の世界との出会いであり、私の中の既有知識が変換されていくダイナミズムです。そしてこの〈出会い〉は、私の日々の生活にも影響を与え、学びによって私の明日が変わっていく。だから、私にとっては〈学習〉は、まさに〈生活〉であり、〈生きている〉ことの証であると考えています。

ただ私のこのような学習観は、残念ながら私の通った学校生活の中で身に付いたものではありませんでした。私はむしろ、自分の学生生活の中で〈学ぶ〉ということの意味を喪失し、それを必死で見出そうともがいていたように思います。私は、かつて何人かの先生に学習に対する自分の素直な思いを投げかけたことがありました。しかし、彼らの答えは私を十分に納得させるものではありませんでした。むしろ「そんなことは考えないほうがいい」というのが、彼らの大方の返答でした。

では、いったいどのようにして、私は自分の学習観を作り上げていったのでしょう。それは、一言でいうと〈他者との出会い〉に他なりません。私は、大学在学中に一人の恩師と出会います。彼は一流の経済学者でした。といっても私は経済のことについては、当時まったく無関心であったので、彼の功績を評価することはできなかったのですが、たまたまご自宅が私の家のすぐ近所であったこともあり、私はよく彼の家に遊びに行きました。そして夜な夜な4、5時間も議論を楽しみました。当時の私にとっては、アカデミックな世界に触れた最初の経験です。私は彼の考えの組み立て方、洗練された情報、そして多面的な物事の捉え方に、毎回興奮していました。彼との議論の時間は、いつもあっという間に過ぎていきました。

それからというもの私は、本を読み始めるようになります。もちろん彼の影響でした。彼の部屋には、大きな書庫があり、私が何か質問するとそこから数冊の本を取り出し、私に引用を紹介するのです。そんな彼を見習うかのように、私は本を読み始めたのです。そしてその内容を自分でレポートにまとめては、またその内容について彼と議論をする。そしてまた、新たな問題提起が生まれる。そんなことをいつしか私は繰り返すようになっていったのです。

そんなことをしばらく続けていると、今度は本とも出会えるようになっていきました。本といっても著者との出会いです。もちろん実際に会うというわけではありませんが、確実に出会うのです。そこには〈読む〉ということを通しての私と著者との対話があったのです。つまり、私にとっての〈読書〉が〈対話〉に変わる瞬間があったのです。そうなると、ページに印刷されたコトバは、単なる媒介となって、私と著者との対話を促します。そして私は、本からも多大な影響を受けることになったのです。本に書かれてある内容が変わることはありませんが、本を読む読者はどんどん変化していきます。影響を受ければ受けるほど大きく変容するわけです。そしてその変容は、読者量を飛躍的に増やしていきました。本を読めば読むほど、私の中の問題提起は増えていき、広がりを見せるようになっていったのです。大学を卒業し仕事を始めてからも、私は人生の節々で〈出会い〉を経験し、その出会いを通して多くのことを学んできました。そしてそれは今も続いています。

このように私の〈学習観〉は、これまでの多くの出会いによって作りだされていきました。そして私を感動させるものは、常にその世界の一流の達人たちであり、彼らの生涯をかけた仕事の中に私は彼らの〈こだわり〉を見出し、そのひたむきさに感動を覚えてきたのです。彼らは、たとえいくつであっても、ひたむきな〈学習者〉であったのです。

話をアウラと子どもたちのことに戻しましょう。今の子どもたちが、学ぶ意味を喪失していき、勉強嫌いになっていく様子を、私はかつての自分自身の姿と重ねているのかもしれません。そしてそんな彼らに、私がかつて経験し、今もその中にいる〈学びの世界〉を味あわせたいと思ったのです。そのためには、〈学び〉そのものの構造を、従来の学校や塾とは全く違ったものとして再構成し直す必要があると考えたのです。

こうしてアウラ学びの森は、今から10年前に誕生したのです。もちろん誕生当初にその完成形があったわけではありません。設立当初にあったのは、私自身の経験とそれに基づく学習観、そしていくつかの学習理論だけでした。それから10年間の実践の中で、私たちと子どもたちとの数えきれない対話の中で、今のアウラの教育は、作り上げられました。私たちの教育に、ゴールがあるわけではありません。これからも変容を続けながら、模索を続けていくしか道はないのです。

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