人間科学修士。日本社会臨床学会、日本教育カウンセリング学会、対人援助学会会員。専門は学習理論研究。教育学、心理学、社会学と学際的な研究活動とフィールドワークをおこなう。2000年京都府亀岡市に自らの研究フィールドとして「グローバル教育研究所」を設立、同年、学びの共同体「アウラ学びの森」、2005年には京都府教育委員会認定フリースクール「知誠館」を開校し、自らの理論研究と教育実践を通して新しい教育モデルの実現をめざす。また、京都府教育委員会および京都府庁府民生活部青少年課の委託事業を受託し、教育、心理、福祉に関わるプロジェクトを行政と共に企画実行している。著書、論文として「学習塾がおもしろい」一光社、「そだちと臨床‐私塾の可能性を模索する」明石書店、「ポストモダンな学びの構築」立命館大学大学院がある。

それは、たった一人の不登校の子どもから始まった
私たちが初めて不登校の子どもと出会ったのは、2003年のことでした。中学校にたった1ヶ月しか通わなかったA君は中学時代のほとんどを自宅で過ごしていました。誰かに会うこともなく特別に何かをすることもなく、A君は2年余りの時間を自宅で過ごしていたのです。そんなA君が知誠館を訪ねてきてくれたのは、3年の夏休みが終わった頃でした。たどたどしい口調でしたが、A君は「卒業までにこれからの自分を考えられるようになりたい」という意味のことを私たちに話してくれました。
子どもを選ばない」という原則
知誠館は「アウラ学びの森」という私塾が母体となってできたフリースクールです。そして私たちはその立ち上げに際して一つだけ掲げた原則があります。それは「子どもを選ばない」という原則。ここで学びたいという意志さえあれば、学習状況がどうであろうが私たちはその子に合ったカリキュラムを用意して学んでもらおうと考えたのです。だからここには、子どもたちの数だけカリキュラムがあるわけです。そしてそんな私たちのもとにA君はやってきたのです。
不登校というドラマ
A君はその後メキメキと力をつけ学習を通して自分に対する自信を取り戻し、しだいに行動力やコミュニケーション力も身につけていきました。そして高校に入学し生徒会活動にも参加し高校生活を十分に楽しみました。その後、大学で社会学を学びそこを首席で卒業し、現在大学院で研究生活を送っています。
「不登校はドラマだ」と私たちはよくそう思います。不登校という経験を通して子どもたちがたくましく変容していく姿を私たちは何人も見つめてきました。「不登校」ということがなければ気づくことができなかった自分自身の可能性を、彼らの多くが見つけていったのかも知れません。